ずわいがにの誕生と浮遊生活

プレゾエア

 ずわいがにの誕生は、雌が腹筋を大きく開閉することによって、外子卵として 抱えている卵の殻が破れ、海中に放出されることによって行われます。 その場所は浸水250mの海底であり、季節は1~2月の真冬です。 ふ化した幼生はプレゾエアと呼ばれ、体調はわずか3mmしかありません。 刺や突起が何もないツルツルの頭と胸が一体となった大きな頭部と細長い腹部からなり、 体を前後に二つ折りにして、激しい全身運動をする様子は蚊の幼虫であるボウフラにそっくりです。 この幼生は光の来る方向へ向かって行く性質、つまり走光性が強く、海底でふ化した幼生は 紫外線を頼って、改定から海面へ向かって泳ぎ上がるものとみられます。 この幼生は生まれた時に脱皮直前の状態にあり、甲羅の内側には新しい甲羅が既に作られています。 飼育試験によるとふ化の20~30分後には脱皮を始め、40~60分後には第Ⅰ期ゾエアになります。 したがって、海面に到達する前に脱皮を完了しているもの見られ、その間にえさをとるとは考えられません。

第Ⅰ期 ゾエア

 第Ⅰ期ゾエアの頭部には側刺が一対、背刺と額刺が各一本の合計4本の長い刺があります。 また長い第Ⅰ触角が一対あって、体の安定を保つと同時に、沈むのを防いでいます。
泳ぐ器官として、将来は顎(あご)になる二対の遊泳脚があり、それぞれに4体の遊泳脚があり、 それぞれに4本の遊泳毛を備え、なめらかな運動が出来るようになりました。
 若狭湾沖合いでは2~3月にかけて、海面から50m位の海面近くに生息していますから、 海流に流されたり、魚のえさになる固体も多いのです。

第Ⅱ期 ゾエア

 第Ⅰ期ゾエアになっ20~30日後には再び脱皮をして、少し大きくなりますが、 二対の遊泳毛数が各々6本に増えたくらいで、形に大きな変化はなく、 第Ⅱ期ゾエアと呼ばれています。水温が最も低い2月をすぎ、表面水温が 高くなる3~4月になると、生息水深を次第に深くします。 福井県には海面から250m付近に暖かい対馬暖流と、冷たい日本海固有水との 境目である温度変化の激しい層があります。 第Ⅱ期ゾエアはその付近まで生息水深を深くします。

メガロッパ

 第Ⅰ期第Ⅱ期ゾエアになった20~30日後にはさらに脱皮をし、メガロッパと呼ばれる幼生に変態します。 メガロッパは明らかかにカニの幼生と分かる形をしてます。 つまり、甲羅は多少細長いものの、カニ本来の形をしていて、一対の鋏脚(ハサミアシ)と4対の歩脚を持っています。 底生生活に入ったカニと異なるのは腹節が胸の下にまだ折りたたまれていないことであり、 腹節にある5対の腹肢が遊泳脚としての役割を持つことになりました。 この腹肢の運動能力は大きく、遊泳速度は大幅に向上しました。メガロッパは泳ぐことができると同時に、 鋏脚と歩脚で物につかまることも、ぎこちなく歩き回ることもできます。 また、鋏でえさをちぎることもでき、生活力は著しく強くなりました。

 やがて、メガロッパは対馬暖流と日本海固有水との境目を通りぬけ、 より深く冷たい深海へと生活の場を移し、海底に達します。 メガロッパへ変態してから30~40日後には、海底で物につかまりながら、稚ガニへの脱皮を行うと 考えられています。ここまで成長するのに、ふ化してから約3か月以内と見られています。

※「科学の目でみた越前がに 著者 今攸」より転載

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